子どもたちの日常を描いた作品を見つめる熊野正則さん(右)と画家の弓指さん=8日午後、名古屋市

 2011年4月に登校中だった鹿沼市の児童6人がクレーン車にはねられ死亡した事故をテーマにした絵画などが、愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で展示されている。三重県出身の画家弓指寛治(ゆみさしかんじ)さん(33)が芸術を通じて事故を多くの人に考えてもらおうと、遺族取材も踏まえ6児童の日常生活を表現した。長男愛斗(まなと)君=当時(11)=を亡くした熊野正則(くまのまさのり)さん(50)は8日、名古屋市の展示場を訪れ、「愛斗も喜んでいると思う。いろいろな形で事故を知ってほしい」と語った。

 弓指さんの活動テーマは慰霊や自殺。開催県の愛知県が全国で最も交通死者数が多かったため、交通事故を取り上げた。全国の事故を調べる中で、クレーン車事故の遺族が執筆した本と出合い、取材を依頼した。今年6月上旬、鹿沼市に足を運び、遺族から子どもたちの人柄やエピソードを聞き取りしたほか、手紙をやりとりし、作品のイメージを膨らませた。

 取材を含め約4カ月費やした作品は、子どもたちが熊野さん宅で遊ぶ絵(縦約150センチ、横約180センチ)や、オーロラの下で登校する絵(同270センチ、180センチ)など大小約260点。タイトルは「輝けるこども」とした。

 熊野さんも弓指さんの取材を受け入れた。事故発生から8年以上、足を運ばなかった交通事故の現場を初めて歩き、弓指さんを案内した熊野さん。「今後現場を歩くつもりはないが、どうしてもきちんと事故を伝えたかった」という。

 8日、展示場を訪れた熊野さんは一つ一つの作品をじっと見つめた。友達のけんかを仲裁したり年下の子の面倒を見たりする愛斗君。エピソードに基づき表現された思い出の形に「愛斗らしい優しさが感じられる」。さらにこう続けた。「自分にも勇気をくれる作品。見てくれる人には今の日常が当たり前ではないことを知ってほしい」

 展示場の一画には加害者に関する作品もある。一部批判を受けて内容を変更した部分もあるが、弓指さんは「事故は被害者と加害者がいる。子どもたちの日常に思いをはせながら、人と車の関係をアートから考えてほしい」と訴えている。

 作品は名古屋市西区那古野2丁目の「メゾンなごの808」で10月14日まで展示されている。