日本を訪れる外国人旅行者は2018年に3千万人を超えた。この6年で3・7倍となり、世界でもトップテンに迫る受け入れ国だ▼流れに乗って政府の目標も訪日客を増やす「観光立国」の推進から、「観光先進国」の実現と一段上がっている。今後、上位国のフランスに倣い、長期滞在しやすい環境も整える方針だ。ただ20年には4千万人との目標は、日韓関係の悪化もあり達成は難しくなってきた▼韓国は訪日客の4分の1を占める。今年上半期に日本に来た人は、前年同期に比べて5年ぶりにマイナスとなった。経済戦争とも呼ばれる昨今では、文在寅(ムン・ジェイン)政権がナショナリズムをあおっていることもあり、訪日をボイコットする動きも広がる。観光が日本を揺さぶる武器になっているのだ▼中国は8月から台湾への個人観光旅行を全面停止した。独立志向が強い台湾の蔡英文(さい・えいぶん)政権に経済的な打撃を与えて、来年1月の総統選で親中派を有利にする狙いもあるのだろう▼観光も国家間が争う武器として動員される時代となった。生活に身近な手段を使って国民を巻き込んで熱狂を求める。あたかも外交の無能さ、政治の機能不全を覆い隠す行為だ▼深刻な対立の緩和には、観光による交流や相互理解の深化が不可欠だ。現状を客観的に分析し、指導者には踊らされないように心掛けたい。