学校の帰り道、低空飛行の米軍機が機銃掃射をしてきた。宇都宮空襲では焼夷(しょうい)弾が落ち、近くの梅林が音を立てて燃え上がった▼先の大戦末期、宇都宮市南一の沢町のうめばやし保育園園長、斎藤(さいとう)セツさん(82)の目の前で起きた光景だ。それらの実体験を紙芝居にし、園児への読み聞かせを始めて5年になる▼複写した手製の絵本も増刷を重ねる。全て手作り。家庭に持ち帰り、保護者らと一緒に読んでもらうためだ。希望者にも無料配布し、できる限り多くの人に、戦争の悲惨さを伝えようとしている▼活動の根底にあるのは、「とにかく戦争はやめてほしい」という強い思い、「実体験を語れる最後の世代」という責任感である。語り部の減少が懸念される今だからこそ、「ぼけないうちに」とおどけながらも、伝え続ける決意を新たにする▼少し前、被爆の記憶や継承について研究する広島市立大平和研究所の直野章子(なおのあきこ)教授の講演を聞く機会があった。直野教授は反戦・反核活動の継承には、被爆者が苦しみを乗り越え声を上げるに至った歩みを周囲が理解し、当事者意識を持つことが重要だと訴えた▼戦争全体にも同じことが言えるだろう。体験者の声に耳を傾け、世代を超えて受け継いでいかなければならない。紙芝居が、その第一歩になってほしい。きょう15日は終戦の日。