小説執筆の経験からハンセン病家族訴訟などについて語る神山さん=宇都宮市内

 ハンセン病元患者の家族に対する国の損害賠償を命じた熊本地裁判決の確定から1カ月。小説執筆を通してハンセン病の歴史を見つめた宇都宮市上戸祭町、元高校教師神山奉子(かみやまともこ)さん(74)は「全面解決に向け、やっとスタートラインに立った」と意義をかみしめる一方、「差別を生む社会構造は、決して過去のものではない」と教育の重要性を訴える。

 神山さんは2014年、ハンセン病を患った両親と置き去りにされた男の子、里親家族の苦悩と成長を描いた小説「国蝶(オオムラサキ)の生(あ)れ立つ樹」を出版。第18回自費出版文化賞特別賞を受賞した。

 今回の訴訟経過に「大きな関心を寄せていた」という神山さん。取材執筆中には、ハンセン病を巡る訴訟で原告側を支援した人とも関わった。ハンセン病研究と治療に長年携わってきた和泉(いずみ)眞蔵(しんぞう)医師もその一人。「僕にしかできないことをやっていきたい」。数年前に届いた年賀状に力強くつづられた一言が印象に残るという。

 ハンセン病患者の隔離政策で苦しんできた家族による初の集団訴訟。原告の元患者家族561人中、実名公表は数人にとどまり、多くは匿名だった。神山さんは「公表すれば次の差別が始まるという恐れ。実名を出せないこと自体が問題の深刻さを表している」と指摘する。

 ハンセン病を巡る差別が今も根強く残ることを実感している。