【足利】本城3丁目の市水道庁舎に展示してある1930年製の送水用ポンプとモーターが製造元の日立製作所に引き取られ、同社で展示されることが決まった。戦前から約半世紀にわたり市の水道を支えたポンプは製造から89年ぶりに生まれた場所に戻り、日本の技術力やものづくりの歴史を次世代に伝える役目を果たすことになる。
送水用ポンプは市が水道事業を開始した1930年、今福浄水場に3台設置したうちの1台。モーターと合わせて長さ2・6メートル、幅0・9メートル、高さ1・1メートルの鋳鉄製で、さび止め塗料で黒く塗られた重厚な姿が往時を今に伝えている。
開設当時の計画給水人口は5万5千人。市民のライフラインとして太平洋戦争期、高度経済成長期を経て76年まで46年間にわたって現役で稼働した。最近のポンプの更新目安が十数年程度とされるのと比べると、稼働期間の長さが分かる。
その後、市の水道を象徴する設備として同庁舎入り口に展示されてきた。しかし同庁舎が老朽化し、市上下水道部が10月に伊勢町4丁目の県足利庁舎に移転するため、市は今後の取り扱いを検討していた。