騒いで授業を受けようとしない100人の子どもたちが、一つの教材でいつの間にか静かになった。これが国語教師大村(おおむら)はまさんを「NIEの先駆者」たらしめた原点なのだろう▼今月初め、宇都宮市で開かれたNIE全国大会宇都宮大会の基調講演。教え子であり「大村はま記念国語教育の会」事務局長の苅谷夏子(かりやなつこ)さんがエピソードを紹介してくれた▼戦後間もなく、新制中学に赴任した大村さん。学ぶ環境が整わない中で指導がうまくいかず辞職さえ考えた。だがある時、思いついたのが、新聞の切り抜きを教材にすることだった。一晩で100人分を作り上げた▼抱きしめては手渡した教材に、子どもたちは食い入るように向かっていった。その姿に大村さんは、声を上げて泣いたという。手渡しは一人ずつに声を掛けながらだった。人と人がつながるとき、対話が重要ということだ▼苅谷さんも同じような教材を作ってみたが、大変な作業だったという。学校での長い勤務時間が問題になる昨今、現場の教員に同様のことを求めるのは難しい。だが、その情熱は見習いたい▼講演は、非常にメモが取りやすかった。ゆっくりと、間があった。県NIE推進協議会の松本敏(まつもとさとし)会長は総括で、「呼吸を置き、正確な最もいい言葉で伝えていた」と解説した。これが対話の奥深さなのだろう。