2018年の日本人の平均寿命は、女性が87・32歳、男性が81・25歳とともに過去最高を更新した。数え年61歳で迎える長寿の祝いの還暦は、もはや時代遅れと化している▼還暦の次に来るのが古希。唐の詩人杜甫の詩にある「人生七十古来希(まれ)なり」が語源という。では90歳の節目は何というか。卒寿である。88歳の米寿などと同様、漢字の形にかけた、いわばしゃれでこちらは日本独特のものだそうだ▼栃木市が90歳前後の市民から、暮らしの知恵や伝承される地域らしさを再認識するためのヒアリング事業を始める。聞き出した知恵や技術を持続可能なライフスタイルを目指す施策に生かす狙いがある▼なぜ90歳か。市の担当者によれば、環境負荷を与え続けた戦後とは大きく異なる、物質循環システムと心の豊かさが融合した戦前の記憶を持ち続けているためという▼先行する秋田市では一例として「山から木を切り出して家具を作り、燃料に用い燃やした後の灰は畑にまいて肥料にした」ことを聞き取った。栃木市はさらに一歩進め、市内の小学5、6年生を同席させ子どもたちへの伝承という一石二鳥の効果を狙った▼8日には大平中央小で最初の試みがある。お年寄りの話に目を輝かせる子どもたちの姿が見られそうだ。敬老の気持ちをも育むこんな事業が県内に広がればいい。