【正月企画】庶民の味とりグルメ 県南編

■焼き鳥と卵焼き もみじ庵(栃木)

 栃木市を代表する観光名所の太平山。名物として名高いのが団子と焼き鳥、そして卵焼きだ。

 夜鳴きする鶏は「不吉な知らせを招く」と忌み嫌われ、太平山神社に奉納された。神社に供えられた米を食べて繁殖し、参拝客に振る舞われたのが始まりだといわれている。太平山中腹の茶店「もみじ庵(あん)」店主の倭文博(しとりひろし)さん(65)は「少なくとも江戸時代には定着していた」と推測する。

 名物は太平山に点在する10店舗の茶店で味わうことができる。多くの店舗が焼き鳥に使うのは市内の業者から仕入れる生後40日前後の「中びな」。値段は張るが、冷めても柔らかい食感を保つのが最大の特徴。たれはそれぞれの店舗が代々継ぎ足した秘伝の味だ。

 卵焼きにもこだわりがにじむ。だしや砂糖、塩などの調味料の微妙な割合で店舗ごとの個性が際立つ。空気を入れながら焼き、ふんわりとした口当たりに仕上げるのも特徴だという。

 太平山神社の初詣に始まり、春は桜、初夏のアジサイ、秋の紅葉と一年を通して多彩な表情を見せる太平山。倭文さんは「それぞれの店の味を食べ比べるのもおすすめです」とPRしていた。

 ◇メモ 栃木市平井町659の9▽営業時間 午前11時~午後2時半▽不定休 (問)0282・25・2388。

■特上肝入り炭火焼き親子丼 よね吉(足利)

 丼のふたを開けた瞬間、炭火焼きの香ばしい匂いが鼻腔(びくう)をくすぐる。あっさりした鶏もも肉とねっとり濃厚な白レバー、とろとろ卵にこくのある割り下−。一杯の親子丼には、店主の松崎正幸(まつざきまさゆき)さん(41)の技術が凝縮されている。

 岩手県産の鶏肉は、煮る前に炭火でじっくりと焼き上げて余分な脂を落とす。割り下は鶏がらを煮込んだ濃厚なスープにしょうゆや砂糖を加えて丁寧に仕上げる。

 卵でとじる作業には、特に注意を払う。煮込んだ鶏肉に卵を注いでふたをしたら、再び開けて固まり具合を確かめるようなことはしない。鶏肉の香りを逃さないようにするためで、固まりすぎないよう適度なタイミングを見計らう。

 松崎さんは焼き鳥店やラーメン屋など、さまざまな飲食店で約13年間修業を重ねた。11年前に足利市内に店を構え、2012年に現在の場所へと移転してきた。

 「匂いをかいだときのお客さんの顔を見るのが楽しみ」と松崎さん。食欲をそそる香りに魅了され、絶妙な固さの半熟卵が米や鶏肉に絡み合って、食べ始めると箸が止まらなくなる。丼はあっという間に空になった。

 ◇メモ 足利市通4丁目3489の2▽営業時間 午前11時半~午後2時、同5~11時▽月曜の昼は休業▽(問)0284・64・9794。

■大山鶏手羽先唐揚げ とり七西口店(小山)

 たれとスパイスが絶妙に絡み合い、表面のパリッとした食感が人気の「大山鶏手羽先唐揚げ(5本)」(税込み480円)が看板メニューとなっている。

 環境や飼料など徹底した衛生管理のもと飼育された鳥取県産の大山鶏を使用。素揚げした手羽先をしょうゆをベースにした甘めの自家製たれに漬け、さらにコショウやサンショウなどをブレンドしたスパイスに絡める。銘柄鶏のうま味が凝縮され、大きさも食べやすいサイズでスナック感覚で楽しめる。

 好みに応じて甘口、中辛、大辛の3種類から選べる。先にオープンした小山市駅東通り1丁目の「とり七」でも名物メニューとなっている。

 150グラムのひき肉を使った「とり七つくね」(同380円)はミニハンバーグ風のボリュームで「ジュー、ジュー」と音を立てながら鉄板でテーブルへ。串焼きの種類は約30と豊富だ。

 座席の近くに設置した氷水の中から瓶ビールなどを好みで選べる「ドブ漬け」などお客が楽しめる仕掛けづくりにも挑戦。関野紘史(せきのひろふみ)店長(28)は「外食する喜びを感じてもらえるような現代版大衆酒場を提案していきたい」。

 ◇メモ 小山市城山町3の6の31▽営業時間 月~木曜・祝日は午後5時~午前0時(ラストオーダー午後11時半)、金・土曜は午後5時~午前1時(ラストオーダー午前0時半)▽定休日 日曜▽(問)0285・20・6515。

■平飼自然卵 関塚農場(佐野)

 佐野市北部の秋山町は、空気が澄み、のどかな自然が広がる。この地で野菜などと共に卵を生産する。

 約15年前から、関塚学(せきづかまなぶ)さん(43)、知子(ともこ)さん(44)夫妻が二人三脚で経営している。自慢の卵は「平飼い自然卵」(10個入り税込み500円)。

 同では、ふ化したヒヨコから大切に育て、かごを使わず、鶏舎の中で自由に動き回れるよう放し飼いにしている。「安全安心な卵」を信条に、エサは地元産の麦や米ぬかなどを独自に配合して与えている。当然、薬剤などは不使用だ。知子さんは「産卵率など営利優先ではなく、ニワトリの健康を第一に考え、自然に近い形を大切にしている」。

 関塚夫妻の愛情を受けてできる卵は、臭みが少なく、さっぱりしながらも白身に甘みがある。知子さんは「市販に比べ黄身は薄いレモン色をしているので驚く人が多い。安全な卵なので、卵かけご飯で食べてほしい」と笑顔を見せる。

 卵は、同市内のレストランやカフェなどでも使用されている。学さんは「卵が苦手な人でもおいしいと言ってくれるので、そういった人にも食べてほしい」と話している。

 ◇メモ 佐野市秋山町1562▽平飼い自然卵の販売は、電話での受け付けなどに加え、同市吉水町の道の駅「どまんなかたぬま」などでも販売している▽(問)0283・87・0536。

■花咲オムライス ビストロポワブル(小山)

 2003年に商標登録された看板メニューの「花咲(はなさき)オムライス」。オーナーシェフの秋本清一(あきもとせいいち)さん(56)は「世界に一つだけの『大人のオムライス』を目指している」と熱っぽく語る。

 パエリアのようにオリーブオイルで炒めた野菜とコメを自家製のチキンブイヨンで炊きあげたピラフが、新鮮な地養卵をたっぷり使用した「ふわとろ卵」に包まれている。

 秋本さんは「この手のオムライスはライスの上に乗った卵をナイフで割ることが多いが、うちのオムライスは卵が自然と花のように開く」と笑顔を見せる。

 仕上げのソースは2種類。イタリアのトマトをオムライス用にアレンジしたトマトソース(税別980円)と、1990年の創業当時から継ぎ足して作られている秘伝のハヤシソース(同1380円)から選べるほか、両方を楽しめるダブルソース(同)も。

 「どれを食べても『本物だ』と感じてほしい」と話す秋本さんは、料理以外にも手を抜かない。落ち着きを感じさせる内装は自らデザインし、全てにこだわりを見せる。今年もオンリーワンを極めた「ふわとろ卵」で魅了する。

 ◇メモ 小山市中央町3の11の27。▽営業時間 午前11時半~午後3時半(オーダーストップ2時)、同6~10時半(同9時)▽定休日 月曜(祝日の場合は営業し翌火曜休み)▽(問)0285・22・8986。

■鳥ソースかつ丼 銀釜(足利)

 1926(昭和元)年創業。落ち着いた雰囲気の店構えは、古い建物が残る路地に溶け込んでいる。

 本多由紀夫(ほんだゆきお)さん(59)は90年以上続く老舗和食店の3代目だ。看板メニューは釜飯だが、丼ものを求めてやってくる客も多い。「鳥ソースかつ丼」はみそ汁とおしんこが付いて税抜き800円。ランチタイムなら同630円で味わえる。

 米の上にキャベツを敷き、加熱したブレンドソースにくぐらせた鳥かつが3枚載る。おわんのふたを開けた瞬間にソースが香り、食欲をそそる。

 ソースかつ丼自体は足利名物だが「豚じゃなくて鳥かつの店は少ないのでは」。生後約3カ月の東北産ひな鳥のもも肉を使う。うまみが強くてやわらかく、簡単にかみちぎれる。

 米は県北産のコシヒカリ。季節によって水加減を変えて毎日同じように炊く。

 本多さんは「先代の父から『素材の質は落とすな。いいものを使え』とよく言われていた」という。厳選された素材へのこだわりは今も途絶えていない。長男で4代目の竜也(たつや)さん(31)も「これからも伝統の味を守っていく」と頼もしい。

 ◇メモ 足利市通2丁目2677▽営業時間 午前11時半~午後2時、同4時半~8時半。ランチタイムサービスは日曜、祝日、1月2日~9日を除く▽定休日 水曜▽(問)0284・21・2657。