「カクテルは『ハードシェーク』で作りなさい。細かい氷の粒を表面に浮かべることで、飲み干すまで冷たさを保てます。ただし、味わいはソフトでなくてはいけません」
これは、修業時代に師から教わった最も大切なことです。ハードシェーク? 強く振るだけでは氷が砕けて水っぽくなるし、どうすればいいのか? 氷の粒を意識的に均等に作れるのか?
これを完全に自分のものにするには、かなりの時間と鍛錬が必要でした。でも、この手法でカクテルを作ると、冷たさ、切れ味はとても素晴らしいものになります。
さて、もう一つ。味わいはソフトにする−。カクテルは口に含んだ時に全ての材料がミックスされ、違和感なく最後まで飲み干せなくてはなりません。
アルコール感が残ったり、一つの材料の味だけが際立ったりするのは、完全に混ざり合っていない証拠。おいしく飲み込んだ後、体の中から少しずつアルコールが効いてくるのが、私の考えるカクテル感なのです。
「ここのカクテルは飲みやすいね。アルコール入ってる?」
いえいえ、しっかり入っております。ハードシェークの冷たさと、ソフトな味わいに気をつけてお召し上がりください。
◆メモ 宇都宮市二荒町5の18ロイヤルマンションA1階。(問)028・635・8676▼出身地 日光市▼バーテンダー歴 31年▼お薦めの一杯 ジャック・ローズ