自治医大付属病院の相談室。ハローワーク宇都宮の担当者(右)と同病院の医療ソーシャルワーカーで相談を受ける=6月、下野市薬師寺

 厚生労働省によるがん患者らへの就労支援事業で、ハローワーク宇都宮への相談を通じて就職を実現した県南在住、女性(43)は「病院に相談の場があることで安心できた。また頑張ろうと思えた」と振り返る。県内での事業は2019年度で4年目。就労だけでなく生活全体の支援に乗り出す医療機関もあるなど、患者を支える動きが広がっている。

 女性は16年に乳がんが発覚した。接客業の仕事をしていたが、3カ月の休職を余儀なくされ、解雇された。「仕事が楽しくて充実した毎日だったのに、一瞬で崩れた。生きていく理由が分からなくなった」と当時の心境を語る。

 自治医大付属病院で手術や放射線治療を終え、就労の相談を始めたのは18年夏ごろ。地元のハローワークの紹介で、ハローワーク宇都宮が担う厚労省の事業を知ったという。定期的に通院しながら、相談を重ね19年、県内の工場への就職が決まった。

 相談には同病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)も立ち会ったため、重い物を持たないなど病状に伴う配慮事項もスムーズに共有できたという。ハローワーク宇都宮の担当者とは事前に職場を見学した。女性は「病気への理解があったため、相談しやすかった」と振り返った。

 ハローワーク宇都宮と事業を進める医療機関は、支援に一層力を入れている。済生会宇都宮病院は宇都宮市社会福祉協議会と連携。生活困窮者の患者については就労支援のほか、公的機関などの援助事業につないでいる。同病院のMSW荻津守(おぎつまもる)さん(59)は「生活全体の支援につなげたい。そのためには地域の横の連携が不可欠」と指摘した。

 那須赤十字病院は6月、就労支援に関して医師や看護師の理解を深めようと、ハローワーク職員らを講師に招き講演会を開催した。約50人が就労相談を行う際の流れを学んだという。1月には事業主向けの講演会も開いた同病院。がん患者専門看護師水野恵美(みずのえみ)さん(46)は「さまざまな立場の人の理解が必要」と強調した。