おかっぱ頭に丸めがねとちょびひげ。フランスで成功した初の日本人画家として知られる藤田嗣治(ふじたつぐはる)は、一度見たら忘れられない風貌である▼昨年、宇都宮市内で見つかった「最初期のおかっぱ頭の自画像」が、県立美術館の企画展で初公開されている。東京国立近代美術館などが所蔵する自画像8点も展示され、見比べるのも面白い▼主任研究員の杉村浩哉(すぎむらひろや)さんによると「藤田ほど自画像を多く描いた画家はいない」という。その背景に迫った講演会「藤田嗣治 自画像を通して考える、画家のセルフ・ブランディング」が先日、同館であった▼講師の美術史家林洋子(はやしようこ)さんは、藤田研究の第一人者。独特の髪形は27歳で渡仏してからで、自分でカットし易かったのとギリシャ時代などの風俗をまねたとし、「毛量が多く、まるでヘルメットのようでパリのモンパルナスでは異彩を放っていたはず」と指摘する▼さらに「それが好きだっただけではなかったと思う。東洋人は低く見られ、無名の画家として成功するためで、ビジュアル系アーティストの先駆けといっていい」と解説した▼81年の生涯の半分をフランスで過ごした藤田は、1920年代には名声が確立した。宇都宮の自画像は渡仏1年後の14年のもの。強烈な個性を発揮し始めた青春真っ盛りの頃と考えると興味が湧いてくる。