生きていれば来年は小学1年生。両親は今頃、まな娘の入学準備にいそしんでいたはずだ。宇都宮市内の認可外保育施設「といず」(廃止)で、宿泊保育中だった山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん(当時9カ月)が亡くなって5年がたつ▼高熱や下痢が続いていたにもかかわらず、放置された。当時の施設長は保護責任者遺棄致死罪などで懲役10年が確定したが、両親が市の指導監督責任などを問う民事訴訟は今なお続く▼本人尋問で母親は「ランドセルを見ると(そんな年頃になったことを)思い出す」と涙を拭った。「抜き打ちで市が調査に行っていれば」。悲痛な叫びが法廷に響いた▼働き方が多様になり、核家族化も進んだ。子どもを抱える親を支えてくれるのが保育施設だ。頼りにしている親心を食い物にするのは決して許されない▼事件後、市は認可・認可外を問わず、電話連絡も含め事前の通告なしで保育施設を訪問する態勢を整えた。園長経験者2人が、巡回指導支援員として市内に180ある施設を回る。認可外には年4回ほど訪れて状況を確認する▼痛ましい事件より前に実施されていたらと今更ながら思う。それでも、指導や調査をかいくぐろうとする悪質な施設が出るかもしれない。同じような事件は二度と起きてはならない。「命」を預ける親の信頼に応える行政であってほしい。