60歳をすぎた会社の先輩は高校時代、決勝で作新と対戦し、内野ゴロを3本。あの怪物・江川の速球を前に転がした。強豪校のエースとしてならした別の先輩は準決勝で、九回2死走者なしから同点に追いつかれ決勝進出を逃した▼共通するのは、その舞台が宇都宮市の県営球場だったことだ。2人に限らず、そこには数えきれない選手たちの喜びや涙が詰まっている。本県高校野球の歴史を彩ってきた球場が、本格改修を終え球児たちを迎える▼第101回全国高校野球選手権栃木大会が12日、開幕する。開会式の会場は新県営球場。令和の時代、そして新たな100年への第一歩を刻む▼仕切りがなくなった内野席、車いす観戦者への配慮、ナイター設備、屋内投球練習場…。水はけも良くなった。新たな工夫はきりがない。だが新球場の本質は「優しさ」と「ぬくもり」なのだろう▼人工芝のグラウンドは温度が50度前後になるが、芝と土の新球場はそこまでは上がらない。ほてった体は、ベンチのエアコンが冷やしてくれる。そして何より、芝や土の状態を最善にするため、多くの人の手が入る。選手たちは忘れないでほしい▼新たな球場に磨きをかけるのは、懸命のプレーにほかならない。見る者の胸を躍らせ、自身の思い出にもなる、新時代の幕開けにふさわしい試合を期待する。