宇都宮市の認可外保育施設「といず」で2014年7月、同市、山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん=当時9カ月=が死亡した事件で、両親が行政の指導監督責任などを問う民事訴訟が、宇都宮地裁で現在も続いている。事件発生から間もなく5年。両親は「娘の命を無駄にせず、事件をうやむやに終わらせたくない」と訴える。10日は訴訟の第6回口頭弁論が開かれ、母親の本人尋問が行われる予定。母親は「自分たちで見聞きした真実を証言したい」と語った。

 愛美利ちゃんは14年7月26日未明、宿泊保育中に死亡した。下痢や高熱などの症状を放置し死亡させたなどとして、当時の施設長は保護責任者遺棄致死などの罪に問われ、懲役10年の判決が16年12月に確定した。

 民事訴訟を巡っては、愛美利ちゃんの両親が15年1月、宇都宮市と施設側に約1億1400万円の損害賠償を求め提訴。市が施設の不適切な保育内容を知らせる匿名通報を受けながら、事前通告なしの特別立ち入り調査を怠ったなどと主張している。

 第1回口頭弁論は15年3月に開かれ、訴訟は今も係争中。今年7月1日の第5回口頭弁論では、施設側に連絡した後に立ち入り調査した当時の市職員らの証人尋問が行われ、職員は「最大限やれることをした」などと主張。別の職員は、調査後に職員間で対応方針の話し合いをしたかどうかについて「覚えていない」などと繰り返した。

 職員の証言は、両親にとって「無責任すぎる。保身でしかない」と映った。これまで仕事をしながら、裁判資料を自ら集めた両親。他の自治体の保育施設に関する指導監督状況を知るため情報開示請求もし、その資料は7千~8千枚に及んだ。母親は「娘を思うと、いてもたってもいられない。素人なりに頑張った」と振り返る。

 事件後に授かった長男(2)の保育施設を選ぶ際は、正確な情報を求めて選択するまで1年を要した。「『娘と同じ目に』と思うと慎重になる。疑心暗鬼になっていた」と打ち明ける。10日に開かれる第6回口頭弁論。本人尋問を前に、母親は「事故の責任を公の場で明らかにしたい」と思いを新たにした。