茨城県の霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結び水を行き来させる霞ケ浦導水事業で、国土交通省霞ケ浦導水工事事務所は8日、水戸市渡里町の那珂川取水口から試験的に取水し、魚類の迷入(吸い込み)量やその対策の効果を調べる試験を始めた。事業は1984年の着工から35年を経て、那珂川から初めて取水する段階を迎えた。
同事務所によると、魚類迷入試験は水門8門からなる取水口のうち、試験のために先行整備した下流側の4門を使用する。3年程度かけて対策の在り方を検証した上で、2023年度末までに残り4門を含め事業を完成させる計画。
この日は午前10時半から午後4時まで、4門のうち最も下流側の2門から毎秒1・5トンを取水。地下トンネルを通り、約5キロ離れた桜機場(水戸市河和田町)まで運ばれ、桜川へ放水された。
今後は徐々に取水の頻度や量を増やし、8月末からは24時間単位などで取水する予定。漁協関係者が特に吸い込みを懸念するアユの仔魚(しぎょ)(幼魚)が降下する秋は夜間を含め取水し、どの時期や時間帯に取水を停止すれば吸い込みをより防げるか分析する。
事業を巡ってはアユなど那珂川水系の水産資源に悪影響を及ぼす恐れがあるとして09年、本県と茨城県の漁連・漁協5団体が取水口建設差し止めを求め、国を提訴。18年4月に和解が成立し、工事が再開した。
同事務所は「試験結果などを示し、漁協関係者の皆さまには引き続き丁寧に対応していきたい」としている。