上映中の映画「誰がために憲法はある」のチラシ。市民団体が「考える機会に」と上映を主催した=6月29日、宇都宮市

 白いブラウス姿の高齢の女性がスクリーンに映し出され、ゆったりと一人語りを始めた。「こんにちは。私、憲法くんです」

 宇都宮ヒカリ座で上映が始まった映画「誰(た)がために憲法はある」。女性が扮(ふん)するのは日本国憲法。自分が変えられてしまうかもしれないと危惧し、訴える。

 「私は戦争が終わった後、こんなに恐ろしくて悲しいことは二度とあってはならないという思いから生まれた、理想だったのではありませんか」

 6月29日の上映初日。宇都宮市、主婦(38)は、ママ友の影響で憲法に関心を持ち、映画を見に来た。憲法改正には反対。小学生の2人の子どもを思い、「9条の改正が戦争のきっかけになってしまうのでは」と不安を感じている。「憲法を守らなければ」。映画を見て思いを強くしたという。

 安倍晋三(あべしんぞう)首相が意欲を見せる改憲。その柱は自衛隊を明記する9条の改正だ。

 白鴎大法学部3年の鈴木杏奈(すずきあんな)さん(21)は、最初に学んだ専門科目が憲法だった。先生は当時、改憲と護憲の両論を説明したが、どちらが妥当かは触れなかった。「自分で考えなさいということだったのかな」

 鈴木さんは今、安倍首相の改憲案に理解を示す。「9条を守った上で自衛隊を書き込むことは賛成。ただ、条文の書き方には注意が必要では」と指摘する。

 だが、友人や家族との会話で憲法が話題に上ることはない。参院選では女性活躍や子育てなど、身近な施策を重視するつもりだ。

 改憲は近年、国政選挙のたびに争点となる。しかしそれを疑問視する声もある。

 6月中旬の宇都宮城址(じょうし)公園。宇都宮市、会社員川崎大助(かわさきだいすけ)さん(38)は雨の中、護憲を訴える集会に初めて参加した。自分で考えるきっかけとするためだった。

 始めは会場の端にいたが、少しずつ中央に近づき、最後は演説者の正面近くで主張を聴いた。翌日は、陸上自衛隊北宇都宮駐屯地のイベントにも足を運んだ。

 改憲するべきか否かは、正直、まだ分からない。ただ、憲法は国の根幹。「選挙に勝ったら改憲する、負けたらしないという話ではないのではないか」。そんな違和感を抱えている。

 ミニ解説 自主憲法の制定を党是とする自民党は、憲法改正を参院選の重点項目とした。党改憲案4項目を明示。戦争放棄の9条1項、戦力不保持などを定めた同2項を維持しつつ、別立ての9条の2を新設して自衛隊を規定する。安倍首相(党総裁)が掲げる2020年の改憲実現目標は示していない。与党でも公明党は9条改憲に消極姿勢を見せる。

 野党では立憲民主党が安保法制を前提とした9条改正を否定し、解散権の制約などの憲法論議を深めるとする。共産党も改憲には反対。国民民主党は未来志向の憲法を議論するとしている。