ハローワークで求人情報を閲覧する求職者ら。より良い職場を求めて職を探す人は多い=24日、宇都宮市

 本来の勤務終了時刻から3時間が過ぎ、やっと職場を後にできた。県南に住む20代男性は自宅へ帰る車内でふと、むなしくなった。「何のために働いているのか」

 男性は製造業で正社員として働く。「見込み残業」で給与に反映されているのは月20時間ほど。しかし業務が忙しく、実際の残業時間は月40時間に上ることもある。「見込み」を上回る残業に対して賃金は発生していない。

 働きやすい社会を実現しようと始まった「働き方改革」。着々と取り組みを進めている大企業とは対照的に、中小・零細企業は対策に手が回らないのが実情だ。人口減少に伴う深刻な人手不足のため、規模の小さい企業は人手をやりくりしながら納期や営業などに追われ、依然として残業は多い。

 男性の会社は20人ほど。ノー残業デーは形骸化しており、職場は「サービス残業が当たり前」という雰囲気だ。「入社以来、働く環境は良くなっていない」。労働条件の良い職場を求め、転職を模索している。

 安倍晋三(あべしんぞう)首相は就業者の増加や1倍を超える有効求人倍率などを挙げ、「雇用は改善した」と胸を張る。しかし、非正規労働者は増加の一途をたどり、県内でも約34万人が不安定な立場で働く。

 「明日から来なくていいから」

 宇都宮市の40代女性は今年4月、約1年間パートで働いていた卸売業の会社を突然、解雇された。

 女性は週6日、1日9時間ほど働いていたが、時給は800円台。本県の最低賃金ぎりぎりだった。

 雇用保険も加入させてもらえなかったため、今は失業保険も支給されていない。女性は「働き方改革は非正規労働者には関係ない」と肩を落とす。

 急な解雇の経験を「もうあんな思いはしたくない」と振り返る。安定した職に就こうと、正社員の求人を探している。そしてこう切実に願う。

 「働く人の権利を守ってほしい」

 ミニ解説 長時間労働の是正など労働者が働きやすい社会の実現に向け、安倍政権は2016年9月に「働き方改革実現会議」を立ち上げた。その後、17年3月に改革の実行計画をまとめた。

 今年4月には働き方改革の関連法が施行された。時間外労働の上限規制、非正規労働者の待遇改善のために「同一労働同一賃金」が導入されるなど、改革の動きが加速している。

 一方で、野党側は関連法の時間外労働の上限が、特別な事情がある場合は月100時間未満であることから、規制が甘いなどと主張している。