じめじめ、じとじと…。貴重な水資源なのだから嫌がってばかりはいられないが、どうにもこの季節は苦手である。食べ物だけでなく家じゅうにカビが生えそうで、昔は梅雨でなく黴雨(ばいう)と表記したのも納得だ▼西日本では入梅が記録的に遅かった。逆に本県は梅雨明けが例年よりも遅れる見込み。適度に降ってさっさと明けてほしいが、そうもいかないか。梅雨は梅雨なりの楽しみ方を見つけるしかなさそうだ▼環境省が制定した「日本の音風景百選」に本県から唯一選ばれたのが栃木市の「太平山あじさい坂の雨蛙(あまがえる)」。雨にぬれたアジサイの葉陰から、「グワッグワッ…」と鳴き声が響くのは確かに風情がある▼この雨蛙の標準和名は、ニホンアマガエルだと県立博物館の学芸員林光武(はやしてるたけ)さんが教えてくれた。体長2~3センチのかわいらしい体を膨らませ、大声で鳴くのは求愛や縄張り争いに一生懸命な雄だけ。雨が降り出すと鳴く習性も知られているが、なぜなのかは不明だそうだ▼〈青蛙(あおがえる)おのれもペンキぬりたてか〉(芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ))。国内のカエルでは最もありふれた種類で逆に姿を見掛けなくなったら、それこそ危機的状況だという▼「ウンカなどイネの害虫をよく食べてくれる、農家にとってはありがたい生き物です」と林さんは話す。アマガエルが喜ぶなら梅雨もよしとしようか。