本県を代表する地場企業であるTKC(宇都宮市)の飯塚真玄(いいづかまさはる)名誉会長(76)が、個人所有の自社株式を全国の税理士に無償譲渡している▼取り組みは2006年に、300万株を無償譲渡したのに続き2回目。今回は21年までの5年間に、100万株を上限にTKC全国会の会員に200株ずつを譲渡する。単純計算で時価総額は約47億円になる▼昨年が同社創業者で父の飯塚毅(いいづかたけし)氏(故人)の生誕100年に当たったことや、会員への感謝の意味がある。それらと並ぶ動機が、業界の今後に対する危機感にある▼国の制度変更に伴い、金融機関が融資先に求める決算書は、事業性を評価する添付書面が重要になった。譲渡を通じて税理士に、しっかりした書面を作ろう、と呼び掛ける。できなければ乱立するクラウド型事業者に席巻されて、仕事が減ってしまう可能性もあるとの見方も示す▼税理士業界は、中小企業の休・廃業増による顧客減少、AI発達に伴う影響懸念などが将来に暗い影を落とす。株式は売却も可能だが、資金的側面より、奮起を促す意味合いが強いのだろう。業界をけん引する責任感がうかがえる▼理事長を務める奨学会は、次世代を担う若者を支え続ける。そして支援先を業界にも向けた。共通するのは将来を見据えた社会貢献である。込めた思いの結実を願う。