免許証の自主返納者に表彰状を送っている原院長

 【大田原】高齢ドライバーによる重大事故が相次ぎ、全国で運転免許の返納制度に注目が集まる中、末広1丁目の原眼科では、免許を自主返納した患者に表彰状を渡している。「他人を傷つけないために、自身の不便を顧みない決断をするのは大変立派なこと。敬意を表したい」と原裕(はらゆたか)院長(69)。「表彰第1号」は2年前に95歳で亡くなった父・博(ひろし)さんだった。

 博さんは運転が趣味だったが、90歳ごろから車を軽くこすったりぶつけたりすることが増えた。「大事故になってからでは遅い。免許を返納してくれたら、その勇気をたたえて表彰する」。心配を募らせた原院長が提案したものの、当初は応じなかった。

 その後も粘り強く説得を続けた結果、博さんは「分かった。自分で返す」と91歳で免許を返納。原院長から表彰状を受け取った。「交通面の心配より、自分は問題なく運転できるというプライドを捨てることが難しかったのだと思う」。原院長は父の心中を想像する。

 「公徳心の高い勇気ある決断を讃(たた)えて表彰いたします」などと記された表彰状は、これまで6年間で50人ほどが受け取った。患者との会話の中で免許を返納したと知ると、原院長がその場で名前を書き込んで手渡している。「照れくさそうにしながらも、今まで全員が受け取ってくれた」と目を細める。

 老眼や白内障などで通院する高齢患者の中には、病院で「次の免許更新はまだ大丈夫だろうか」と悩みを打ち明ける一方、家族から注意されても素直に耳を傾けられない人も多いという。

 「免許を返納すれば問題が終わるのではない。運転ができないことで自尊心を失ったり、趣味が減って元気がなくなったりする高齢者を、精神面でサポートしていく制度が必要だと思う」と原院長は提言する。表彰状には「立派な決断をした自分自身を褒めてあげてほしい」という願いも込められている。