経済的に困っている県内の高校生を援助しようと、61年前、小社の呼び掛けで創設された下野奨学会。寄付で賄われる返済不要の奨学金を受け、今春卒業した17人のうち4人の作文が本紙に載った▼中学3年で父を亡くし、母も高校3年の時に他界した女子学生の作文は、懸命に育ててくれた母や周囲の人たち、そして奨学会への感謝であふれていた。大学に進んだ彼女が夢を実現できることを願う▼大学生らの半数が奨学金を受給する時代になった。多くが貸与型だ。返済に苦労した話も枚挙にいとまがない。宇都宮市のソプラノ歌手小高史子(おだかふみこ)さん(44)もその一人。東京芸大大学院時代に借りた▼プロを志し、定職には就かなかったから、長い間いばらの道だったという。ようやく完済したのを機に、市文化会館で開いたリサイタルの益金と募金を近く、下野奨学会に寄付する▼高校の授業料が実質無償化されたとはいえ、その他もろもろの経費はかかる。せめて高校の奨学金の返済で苦しまないでほしい-。ステージ上でそんな話をした。美しい声が観衆の心を打ったのか、募金箱には益金とほぼ同じ額が集まった▼卒業生たちは作文に「恩を忘れない」と書いた。彼らはいつか、後に続く子どもたちや社会に貢献する立派な大人になるだろう。奨学生を支える善意の輪を広げたい。