浴衣のきみは尾花(すすき)の簪(かんざし) 熱燗徳利(あつかんとっくり)の首つまんで…。吉田拓郎(よしだたくろう)さんの1972年のヒット曲「旅の宿」はこんな出だしで始まる。旅先の恋人同士の様子を情感たっぷりに歌った▼作詞家の岡本(おかもと)おさみさんが、東北のある温泉旅館で曲想を得たといわれている。この曲を聴いて、全国津々浦々に温泉宿がある日本に生まれて良かった、と思った方も多いのではないだろうか▼「日帰りや1泊2日の温泉旅行でも心身の健康増進に効果あり」。環境省が多忙な現代のライフスタイルに合わせた温泉の楽しみ方を「新・湯治」として提唱している、との記事が先日の小紙にあった。アンケートでは短期滞在者の大半が「憂鬱(ゆううつ)な気分が少なくなった」「肌の調子が良くなった」と感じている▼県の最新の調査によると、2018年の県内の宿泊者数は前年比1・1%減の826万9千人にとどまったという。全体の入り込み客は順調に伸びているにもかかわらずだ▼幸いにも本県は源泉数、湧出量とも関東ではトップクラス、全国でも上位にある有数の温泉県である。環境省の提唱をうまく活用し、宿泊者数を押し上げることはできないか▼塩原温泉の旅館のあるじは「人手不足でお客を受け入れられないことが、宿泊者数減の要因の一つ」と明かす。根は深いが、何とか知恵を絞ってもらいたい。