「一人一人に寄り添った支援を」と呼び掛ける池上正樹さん=宇都宮市内

 県子ども若者・ひきこもり総合相談センター「ポラリス☆とちぎ」に寄せられた2018年度の相談件数が過去最多となり、相談のうち最多を占める引きこもりへの支援の必要性が再認識されている。特に、引きこもりが長期化した中高年層への支援は急務。先月末、宇都宮市内で講演したジャーナリスト池上正樹(いけがみまさき)さんは「まずは『生きたい』という意志を当事者が持てることが大切」と就労や就学をゴールにしない支援を呼び掛けた。

 講演会は県内の不登校・引きこもり当事者とその家族を支援するNPO法人「KHJとちぎベリー会」(斎藤三枝子(さいとうみえこ)理事長)が主催。多くの当事者家族や関係機関職員らが訪れた。

 20年以上にわたって引きこもりの問題を取材している池上さんは、高齢親子の社会的孤立に端を発した全国の事件を例示しながら「共通点は、支援から取りこぼされたこと」と分析。「つながりの貧困という視点で問題を見なければ、命が失われかねない」と警鐘を鳴らした。

 引きこもりが潜在化・長期高齢化している背景として指摘するのは「一度レールから外れると戻れなくなる社会の構造と、支援の枠組みの失敗」だ。

 池上さんによると、引きこもる行為は「自分の価値観を守り、生き続けるための選択肢」。引きこもりの支援というと就労などにつなげることを思い浮かべがちだが、「社会の枠に合わせるのではなく、一人一人の方向性に寄り添っていく支援が必要」と強調した。

 県内の引きこもりに関する相談を受け付けている同センターによると、新規相談者に占める40代以上は15年度以降、全体の約1割で推移。だが、中野謙作(なかのけんさく)センター長は「実際に問題を抱えた人は数字より多い」とみて「今後も慎重に一層の支援を行っていきたい」と話す。

 川崎市で児童らが殺傷された事件、都内で元官僚が長男を刺殺したとみられる事件などが相次ぎ、引きこもりへの偏見の広がりも懸念されている。中野センター長は「当事者本人や家族が家庭で安心できなければ、次の支援につながらない」とこうした偏見の弊害を危惧している。