えもり・せいた 1997年国立環境研究所に入り、2018年から現職。専門は地球温暖化の将来予測とリスク論。IPCC第5次、第6次評価報告書の主執筆者を務める。

 世界の平均気温は産業革命以降、すでに1度温暖化し、いまも上昇を続けている。持続可能な社会を次世代に引き継ぐために、私たちは気候変動とどう向き合えばよいのだろう。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書の主執筆者を務める国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多(えもりせいた)副センター長に話を聞いた。

エチオピア東部ソマリ州で干ばつに見舞われ、木の下に避難する家族ら=2017年9月(WFP/PETER・SMERDON提供)

 2015年に国連で採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、「世界平均気温の上昇を産業化以前と比べて2度より十分低く抑え、さらに1・5度未満に抑える努力を追求する」という長期目標が合意されている。

 昨年10月には、上昇幅を1・5度に抑えた場合の影響などをまとめた国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書が公表された。気候変動による悪影響のリスクは、1・5度温暖化した世界では現時点よりも顕著に大きくなり、2度ならさらに大きくなることなどが書かれている。これを受け、世界では「やはり1・5度で止めるべきだ」という議論がかなり盛り上がっていると感じている。

 現時点で、世界の平均気温はすでに1度上昇している。1・5度未満で止めようと考えると、産業革命以降、もう3分の2まで来てしまった。そして残り3分の1は、今のペースで温暖化が進めば、あと20年前後で到達する。

 それが、私たちの現在地を示している。

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 1度の温暖化による悪影響や、1・5度でどのくらいひどくなるかについて、まだ日本国内ではそれほど深刻には捉えられていないかもしれない。

 だが、大きな被害が出ているのは、対応力が限られる途上国の人たち。特に干ばつが食糧危機をもたらすような乾燥地域の国々、海面上昇や高潮の影響が生活基盤を脅かすような沿岸域、あるいは小さい島国の人たちにとっては、かなり深刻だ。

3月15日、オーストラリアのシドニーで、気候変動対策を求める集会に参加した学生ら

 こうした国々の他にも、世界では人類とその文明にとって危機的な状況が迫っているという認識を持つような人たちが増えてきている。中でも非常に大きなグループが若者たちだ。

 学校を休んで気候変動対策を求める「学校ストライキ」が世界中で起きている。今年の3月15日には約150万人が参加し、5月24日にも世界規模でのアクションがあった。

 例えば2050年に気温上昇が1・5度を超え、自然災害や生態系の破壊、さらに社会的な混乱が本当に深刻になった時に、彼らは40代ぐらい。社会の真ん中でそうした状況を受け止めなければならない世代が本気で心配しているということだ。

 彼らは今、政治的な発言権がないため、学校を休むという、ちょっと極端なことをやって注目を集めながら、自分たちの声を大人たちに聞かせようとしている。

 これは、現在の世界における危機の認識としては象徴的な出来事だ。