フランスで国家指導者や高級官僚を輩出してきた最高のエリート養成校、国立行政学院(ENA)が揺れている。卒業生でもあるマクロン大統領が、同校の廃止に言及したからだ▼ENAは第2次大戦後の国家再建を目的に設立された。学生はグランドゼコールと呼ばれるエリート校卒業生からさらに選抜され、1学年100人前後。授業料は免除され、在学中は月1682ユーロ(約20万円)が支給される。卒業後最低10年は国家に奉仕することが求められる▼問題は学生の出身階層の偏りだった。創立当初こそ縁故入学を退ける徹底的な能力主義が歓迎されたが、現役学生で労働者階層出身は約4%。大半は官僚、企業幹部の子弟が占める▼育ちの似た学生は同じような考え方に流れやすい。ENAは社会階層の固定化であり、エリートの「一元的思考を作る鋳型」と批判されていた▼5月の欧州連合(EU)欧州議会選挙で、フランスでは極右の国民連合が第1党となった。「人々の姿を見ずに、パリで政策決定する者が多すぎる」というマクロン氏の言葉には、各国で指導層が大衆の姿を見失っているとの危機感がにじむ▼移民排斥や自国第一主義、エリート敵視を掲げるポピュリズムの台頭にどう抗するか。エリート校の漂流は、民意を測りかね、右往左往する指導層の姿と重なる。