原発の再稼働で先行する関西、四国、九州3電力は、設置が義務付けられているテロ対策施設の工事が遅れているとして完成期限の延長を求めたが、原子力規制委員会は受け入れず、期限を守れない原発は運転を停止させると決めた▼この問題で思い出したのは、原発が襲撃を受ける小説「神の火」の執筆の動機を語った作家の高村薫さんの言葉だ。「米軍の高性能爆弾がイラクの防空壕(ごう)を打ち抜いたニュースを見た。原発がミサイルで打ち抜かれたら『日本は終わり』と思った」▼1991年の湾岸戦争で、分厚いコンクリートを貫通する米軍の誘導爆弾の威力が報じられ、そこから着想を得た。テロ対策施設がない原発で破壊工作が発生すれば重大な結果を招く。だが、電力側にそうした危機感は見られなかった。テロなど起きない、と高をくくっているのだろうか▼米国では2001年の米中枢同時テロ後、原発のテロ対策が強化された。概要は日本政府にも伝えられたが、日本は対策をとらなかった。テロ対策を進めていれば、東京電力福島第1原発の電源喪失への対処能力は違っていたはずだ▼原発は運転を停止しても、核燃料の冷却は続けなければならず、テロの脅威がなくなるわけではない。「日本は終わり」という事態を招かないために、危機感を持って取り組むべきだ。