エリアンサスの長所を説明する高野さん。温暖化防止や地域活性化につながると期待する=22日、さくら市喜連川

 ボイラーの小窓を開けて内部をのぞくと、粒状の燃料が、炭のように赤々と燃え盛っている。5月下旬、さくら市喜連川の市営浴場「もとゆ温泉」。シャワーなどの給湯用の水が、ボイラーで熱されている。

 燃料は熱帯起源のイネ科の多年草「エリアンサス」と木材を粉砕して混ぜ、2センチほどに固めたペレットだ。「よく燃えるから、熱がすごいんですよ」。独自技術でペレット化した市内の建設業「タカノ」の担当者が炎の具合を確認しながら説明した。

 「地球温暖化対策はもちろん、地域のさまざまな課題解決に役立つ」。タカノ社長の高野誠(たかのまこと)さん(60)はエリアンサスに大きな可能性を見いだしている。

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 もとゆ温泉では、シャワーなどで使う湯を沸かすのに年間約100キロリットルの灯油を使っていたが、2017年春からエリアンサス燃料に変えた。

 エリアンサス燃料など植物資源などを加工したバイオマス燃料は、燃焼で温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を出すものの、もともと植物が大気中から吸収した分なのでトータルの排出量は増えない。そのため温暖化対策につながるとして注目されている。

 エリアンサスは、高さ約4メートルまで伸びる。1ヘクタール当たり25トンの収量が見込め、毎年収穫できる。施肥は「2、3年に1回」(高野さん)と栽培効率もいいのが特徴という。

 「苗を植えたら、そのまま。ほとんど手間がかからない」。育てやすさを実感する高野さんは「どの地域でも課題になっている耕作放棄地を活用できる」と、エネルギー創出のフィールドに放棄地が変わる将来をイメージしている。

 木材を使ったバイオマス発電の事業化を検討していた13年、那須塩原市にある農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の拠点でエリアンサスを扱う研究者の存在を知り、新燃料の挑戦に共同で取り組んだ。

 3ヘクタールで始まった栽培面積は、8ヘクタールに増えた。全国の企業や行政、大学関係者が視察に訪れる。昨年は、さくら市内に生産組合もできた。手応えは確かなものになりつつある。

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 研究を進めている農研機構飼料作物ゲノムユニットの蝦名真澄(えびなますみ)主席研究員は「熱源をエリアンサスに変えることで、CO2ゼロの事業ができることを一般の人に知ってもらう機会にもなる」と、さくら市での取り組みの意義を語る。

 もとゆ温泉を運営するさくら市は「エネルギーの地産地消を発展させ、新たなバイオマスエネルギー産業の育成などにもつなげたい」と今後を見据える。

 温暖化対策、農地保全、エネルギー自給を、エリアンサスで一つに-。エリアンサス燃料の需要をどう創出していくのかなど課題も多いが、高野さんが思い描く先には「地域活性化」がある。「市や県北を全国のモデル地域にしたい。単なる燃料に終わらせたくない」