那須野ケ原土地改良区連合が手掛けた小水力発電所。地域の再生エネを活用し温暖化対策に取り組んできた=9日、那須塩原市百村

 鮮やかな苗の緑が広がる水田を潤す用水路に、水門のような施設が据え付けられている。近づくと、発電機の音が聞こえてくる。

 「今の時季、毎秒2・4トンの水が流れ、2メートルの落差で最大30キロワット発電できます。既存の水路に設置したので土木工事もいりませんでした」

 5月上旬、那須塩原市百村(もむら)にある小水力発電の百村第2発電所。運営する那須野ケ原土地改良区連合の吉沢繁樹(よしざわしげき)さん(48)が制御盤の数字をのぞいた。

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 同連合は、同市内の5カ所で最大出力30~500キロワットの8基を管理する。急峻(きゅうしゅん)な開拓の大地、那須野ケ原に張り巡らされた那須疎水などの用水路は、総延長約330キロメートル。通常より小規模な水量と落差で発電でき、発電時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を出さない再生可能エネルギーとして活用してきた。

 一番古い那須野ケ原発電所の建設は27年前。「那珂川の水量が減って水環境がおかしいと感じた。用水を管理する責任として何かやらなきゃと思った」。当時事務局長だった星野恵美子(ほしのえみこ)専務理事が振り返る。

 先進地の岩手県遠野市を視察して、小水力発電のノウハウを学んだ。未知の試みにためらいを見せる役員を説得し、発電した電気を売る交渉も苦労の連続だった。

 30年ほどがたち、環境は変わった。豪雨など気候変動の影響が深刻化し、再生エネが注目される現在、小水力と太陽光を合わせ、売電収入は例年2億円を超える。農家の負担金軽減に加え、年間3千トン超のCO2の排出削減という価値を誇れるようになった。

 環境省が行った2010年度の中小水力発電の調査によると、導入可能な農業用水路の地点数は本県が65カ所で全国トップ。県によると、日光連山や那須連山があり、水量が豊富なことなどが理由に考えられる。より小規模な適地を県が12、13年度に調べた結果、候補地は約340カ所あった。

 「まだまだ小水力のポテンシャルはある。他の地域にも広がってほしい」と星野さんは期待する。再生エネで発電した電気の基地を各地域に作り、農家が活用する。売電にとどまらないエネルギーの地産地消を夢に描く。

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 農業用水路を使った小水力発電には県も目を向ける。東日本大震災を契機に、独自事業「栃木版スマートビレッジ」として、小水力発電の電気を農村地域内で有効利用する取り組みを11年度から始めた。

 宇都宮市内での実証試験を経て16、17年度、県内に三つのモデル地区を設置。電気自動車に充電し、出荷や除草作業などを試した。

 現在、事業を基に宇都宮市、小山市、塩谷町の土地改良区などが小水力発電所の計画を進めている。県農村振興課の担当者は「小水力は農村部で眠っているエネルギー。有望な地域が多くあり、力を入れて増やしていきたい」と意気込む。

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 気候変動対策は、影響を軽減、回避する「適応」だけでなく、CO2などの温室効果ガスの排出を削減する「緩和」と、両輪で成り立つ。第5部では、県内外での特徴的な緩和の取り組みを追った。