アジア猛禽(もうきん)類ネットワークが5年前、フィリピンのルソン島北部で小さなタカの仲間サシバの調査をしたところ、毎年約5千羽が密猟されていることが分かった▼現地の大学や行政、警察と協力して保護の重要性の啓発を進め、3年で根絶に成功した。沖縄県宮古島では食料となっていたが、地域ぐるみの保護活動を展開し、約40年かけて2009年ごろに密猟が完全になくなった▼それでも自然環境の変化などでサシバの減少は続いている。保護や活動の発表、交流を目的に越冬地のフィリピン、中継地の宮古島、国内の繁殖地の関係者が一堂に会し、初めての「国際サシバサミット」が市貝町で開かれた▼基調講演した東京大名誉教授の樋口広芳(ひぐちひろよし)さんは宇都宮大卒で、人工衛星を使った鳥の渡りの研究で世界的に知られる。サシバは地図もコンパスも持たずに毎年同じ場所に正確に戻ってくるというから、人間には計り知れない能力がある▼春と秋の渡りはそれぞれ2千キロを超し、日数も1カ月前後かかる。まさに命懸けの旅である。「鳥には国境がなく国を越えた保護が必要」との主張は説得力があった▼市貝町は国内の代表的な繁殖地で、会場の小貝小は里山の中にある。ここで国際的な保護の取り組みの第一歩が刻まれた。渡り鳥であるサシバが人と人、国と国をつないでくれた。