新聞やテレビなどでどんなに報道されても振り込め詐欺は後を絶たない。最近ではキャッシュカードをだまし取られ、ATMで現金を一気に引き出される被害が急増している▼トリックまがいの巧妙な手法で、特殊詐欺グループの新たな手口である。県警によると、カードをだまし取られるなどの被害は昨年1年間で85件あった。今年に入っても被害は頻発している▼心理学者妹尾武治(せのおたけはる)さんの著書「脳は、なぜあなたをだますのか」は、おれおれ詐欺の被害に遭う原因を解明している。息子と名乗る人物が矢継ぎ早に自分の困難な状況と、それを救うための金銭的な条件を電話越しに伝えてくる▼親は電話でのやりとりと中身の理解に意識を取られ、自称息子が本物かどうかまで考えが回らない。おれおれ詐欺は人間の注意の仕組み、認知の限界を巧みに利用している、と説明する▼特殊詐欺の被害防止を目的に、県信用金庫協会加盟の県内6信金が来月から、ATMから引き出せる出金限度額を「1日当たり10万円」とする利用制限を設ける。一定期間出金のない高齢預金者が対象といった条件が付く▼利用者は不便になるが、大切な預金が守られれば言うことはない。高齢になればなるほど注意力、認知力は低下する。妹尾さんは、そうした状況を自覚することが重要と指摘している。