日を追うごとに山の緑が濃くなってきた。県内では自生するフジに加え、同じ薄紫色のキリの花が点在して彩りを添える。昔は娘が生まれたらキリを植え、嫁ぐ時にたんすを作る風習があった▼キリは杉やヒノキに比べ早く育ち、湿気を調整し防虫効果もあるので嫁入り道具に欠かせなかった。県伝統工芸品の鹿沼総桐箪笥(きりだんす)を製造・再生する大塚敏(おおつかさとし)さん(56)は「私の親の代ぐらいまでで、今、そうした注文はないですね」と話す▼きりだんすを持参する結婚はかなり減っても、変わらないものがある。ほとんどの女性が夫の名字に改姓する。法律で夫婦同姓を義務付けているのは日本だけだという▼統計では、結婚したカップルの実に96%が夫の姓を選択する。旧姓の通称使用を認める職場が増え、不利益が減ったのも背景にあるのだろう。ただ、問題が消えたわけではない▼ソフトウエア開発会社「サイボウズ」の青野慶久(あおのよしひさ)社長は結婚して妻の姓に変え、仕事では旧姓を名乗る数少ない男性の一人。日本人同士の結婚で夫婦別姓を選択できないのは憲法違反だとして国を訴えたが、東京地裁は3月、請求を棄却した▼青野氏らは控訴する方針だ。多様な生き方が認められる社会は、誰にとっても生きやすい社会に違いない。青野氏の挑戦が今後、どう世論を巻き込んでいくのか注目したい。