東京パラ出場目指して練習に励む植竹さん=4月23日夜、小山市内

 対人関係の構築が難しい自閉スペクトラム症という障害を抱えながら競泳を続けてきた小山市の青年が、2020年東京パラリンピック出場を目指して練習に励んでいる。得意の背泳ぎは知的障害者の全国大会で4位にもなった。所属するスイミングクラブ、日々の練習や全国転戦に付き添う母のサポートもあり、目標とする夢は手の届くところまで近づいている。

 小山市内の福祉事業所で就労移行支援を受けながら働く植竹海晴(うえたけかいせい)さん(20)の日常は、水泳漬けだ。同市内のスイミングクラブ「イーグルスポーツプラザ小山」で指導を受ける傍ら、県外でも強化練習会参加やジムトレーニングに励む。

 東京パラリンピックで目指す種目は、知的障害者対象の背泳ぎ。1月の日本知的障害者春季水泳競技大会では50メートルが47人中4位、100メートルが29人中9位になった。得意とする100メートルのベストタイムは1分14秒95。トップ選手との差は約10秒あるが、パラリンピック育成選手標準記録は突破している。

 東京生まれの植竹さんは小学1年から水泳を始めた。しかし、障害ゆえに受け入れてくれるスイミングスクールはなかった。本格的に水泳を始めたのは、中学で小山市に転居してから。水泳部に入部し、健常者の生徒に交じって県大会にも出場した。

 この10カ月間で、植竹さんは100メートル背泳ぎのタイムを10秒も短縮した。コーチの赤石泰宗(あかいしやすむね)さん(24)は「体の使い方を徹底的に教えた」と言う。テクニック重視の指導には理由がある。植竹さんにはてんかんの持病もあり、過度な疲労は発作を誘発する。トップスイマーなら5千メートル以上泳ぎ込んで体を作るが、植竹さんは1500~3千メートルが限度という。

 植竹さんは抽象的な概念や遠回しな表現の理解が苦手だ。教える赤石さんにとっても初めてのチャレンジ。当面の目標は、事実上の東京パラリンピック選考会となる来春の記録会で表彰台に上ること。赤石さんは「可能性は十分」と言い、植竹さんも「絶対東京パラに出たい。だめでも(次の)パリを目指す」と目を輝かせる。

 母親の富美代(ふみよ)さん(47)は「自分から進んで練習するようになった」と、たくましい体になった息子に目を細める。東京パラリンピックまで500日を切った。3人のチャレンジは、さらに熱を帯びる。