はじける笑顔に、どん底からはい上がった者の強さを感じた。

 飛び込みの日本室内選手権が4月19日に都内で開催され、榎本遼香(えのもとはるか)(22)=作新高出、栃木DC=が女子シンクロ板飛び込みで初優勝し、世界選手権出場を確実にした。

 平坦な道のりではなかった。作新高時代にインターハイと国体の高飛び込みで3連覇を達成した榎本の運命が暗転したのは筑波大進学直前の2015年3月。ユニバーシアード代表に選ばれた後に国立スポーツ科学センター(JISS)でメディカルチェックを受けた際、「肺に腫瘍がある」と告げられた。

 宇都宮市内で精密検査を受けると「肺がんの疑い」との診断。腫瘍はピンポン球大まで成長していたため傷口の小さい腹腔鏡(ふくくうきょう)手術は難しく、開胸手術を受けた。

 幸い腫瘍は悪性ではなかったが、術後は傷の痛みで手も上がらない。肺の一部を切除したため、呼吸も苦しくなったという。「生きているだけでいい、というところまで落ち込んだ」。一時は競技から身を引くことも考えた。

 同年7月のユニバーシアード大会で再スタートを切ったが、体が完全に回復し気持ちの整理がつくまでには長い時間がかかった。「競技としっかり向き合えたのは大学4年の夏」だという。

 今春には筑波大大学院進学に伴い、練習拠点を県内に移した。「何のためのトレーニングなのか、動作なのか、分かってきた。どうしたらうまくなれるかも、つかめてきた」。どん底を経験したことでアスリートとして一回り成長を遂げた。

 「これまでは基準点をクリアしているのに選ばれなかったり、ユニバーシアードで終わってしまった。私にとっては三度目の正直」と語る世界選手権で8位以内に入れば東京五輪出場が内定する。奇跡の復活劇にはまだ続きがある。