台風24号の接近でJR東日本は異例の「計画運休」に踏み切った。午後8時以降、首都圏全線で順次運転を見合わせた=2018年9月30日午後7時15分、JR宇都宮駅

 全線運休まで、あと1時間。

 「まだ動いている」

 「間に合った」

 昨年9月30日午後7時ごろ、JR宇都宮駅構内。電光掲示板で発車時刻を確認した利用客たちはつかの間、安堵(あんど)の声を漏らすと、足早に改札へと向かった。

 大型の台風24号接近に伴い、JR東日本はこの日正午すぎ、午後8時以降の「計画運休」を公表。本県内を含む首都圏全線では初のケースだった。

 同社によると、在来線1218本、新幹線21本が運休し、合わせて約46万人に影響した。「首都圏の広範囲で深夜にかけて風の運転規制値を超えることが想定された」(広報担当者)ことから、異例の対応に踏み切った。

 利用者からは「全線区での計画運休に納得できない」「当日午後の発表では遅い」などの批判の声とともに、「(計画運休で)混乱を避けられた」といった肯定的な意見も寄せられたという。

   ♢   ♢

 JR西日本も同じ台風で、京阪神エリアの全線運休を事前に公表した。同社は2014年10月の台風接近時に初めて京阪神の全線運休を前日に予告。昨年9月上旬の台風21号でも実績があった。

 「事業者の使命としてできるだけ走らせたいが、安全確保が大前提。少しでも不便を掛けないように、前日までに公表している」と、同社の広報担当者は明かす。「苦情もあるが、『自然災害なので仕方ない』という声も頂いている」

 民間調査会社「サーベイリサーチセンター」(東京都荒川区)が実施した大阪市民対象の調査によると、昨年の台風21号時の公共交通機関の運行停止などの早めの措置に、9割以上が必要性を感じ、肯定的に受け止めていたという。

   ♢   ♢

 昨年の台風ではJRのほか、私鉄各社にも計画運休の動きが広がった。

 国土交通省は昨年10月、鉄道各社による検討会議を開き、情報提供などの対応が適切だったかを検証。中間取りまとめで「計画運休は必要」とし、早期帰宅の促進や不要不急の外出の抑制、イベントの休止や早期の切り上げなど「社会の安全を確保する役割も果たしていた」と意義付けた。

 一方、できるだけ前もって公表する必要性や、外国人観光客も分かるように多言語での情報提供を積極的に実施することなども盛り込まれた。

 気候変動が進めば、豪雨の増加やより強い台風の発生が見込まれ、今後も計画運休は避けられない。ただ、実施しても天気予報が外れ、「空振り」に終わる可能性もある。

 京都大防災研究所の中北英一(なかきたえいいち)教授(水文気象学)は「気象予測には不確定性があり、予測の失敗は、危険側ではなく安全側に失敗しないといけない。こうした空振りを、一般の人が受け入れる社会や文化を醸成していく必要がある」と指摘する。