「まるごとまちごとハザードマップ」の想定浸水深を示す標識=12日、野木町友沼

 「小さ過ぎると外から見えないのでは」

 「ぱっと見で外国人にも分かるように」

 昨年12月3日夜、栃木市吹上町の吹上公民館。同市内を拠点に活動する市民グループ「人と未来のセーフティーネット」のメンバーが、民間の一時避難所の目印になるステッカーのデザインを話し合っていた。

 民間の一時避難所は、同グループが地元の企業などに協力を呼び掛け、社員食堂や会議室など一時的な避難場所になり得る施設を提供してもらう。

 早ければ5月中にも、ステッカーが貼られた避難所が登場する予定だ。

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 同グループは昨年9月、40、50代の経営者ら7人で発足した。

 近年、各地で災害が頻発し、2015年9月の関東・東北豪雨では同市内も被災した。そんな中、市のハザードマップにある指定避難所の収容人数が、「地区人口の2~3割程度の住民しか収容できない」(同グループ)と知ったのが、活動を始めたきっかけだ。

 一時避難所の目標は約100カ所。協力施設のリスト作りや地図作製も検討していく。代表の天海貴子(あまがいたかこ)さん(46)は「市のハザードマップに避難所の協力施設を記してもらうなど、行政も巻き込んだ活動にしていければうれしい」と話す。

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 気候変動が進めば、豪雨被害も増えると予測される。浸水が想定される地域では、ハザードマップの活用はもちろん、住民自らが補完する動きも出ている。

 宇都宮市石井町の鬼怒川右岸に位置する下川岸地区。自治会長の菊池芳夫(きくちよしお)さん(71)は「鬼怒川が危なくなったら、まず地区の公民館に集まる」と話す。

 ハザードマップにある指定避難所の小学校までは約2キロ。途中には小さな河川もあり、夜間や豪雨時は子どもやお年寄りにとって危険な道のりになりかねない。「万が一の場合は、小学校まで向かわず、高さがある近くの建物に逃げることになる」と、菊池さんは言う。「自分たちの命は自分たちで守らないと」

 ハザードマップを日常に浸透させる工夫も進む。

 「思川・巴波川が氾濫すると5・0メートル以上浸水する可能性があります」

 野木町友沼の思川沿いにある新城公園の電柱には、想定浸水深を示す標識が取り付けられ、地面から5メートル上には青いテープが貼られている。

 国土交通省が06年に始めた「まるごとまちごとハザードマップ」の取り組みだ。地域をハザードマップに見立て、過去の被害や想定浸水深、付近の避難所へのルートなどの標識を市街地に掲示する。

 18年9月現在、全国の13・5%の自治体で実施している。県などによると、県内には栃木、さくら、那須烏山と野木の4市町に約60カ所あるという。国交省利根川上流河川事務所の担当者は「生活空間で危険性を実感し、いざというときに逃げる必要性を普段から分かってほしい」と呼び掛ける。