斜面が崩落したお丸山公園。さくら市が土砂災害対策を強化する大きなきっかけとなった=2011年9月27日、さくら市喜連川

 「ドドドー」という重い音が響き、窓を開けた。

 「臭いだよ。変な土の臭いがすごくて、夜中でも何が起きたかすぐ分かった」

 2011年9月22日未明。本県を直撃した台風15号などの影響で、さくら市喜連川のお丸山公園南側斜面が幅約70メートル、高さ50メートル、長さ140メートルにわたって崩壊した。大量の土砂は近くで民宿を営む高塩久雄(たかしおひさお)さん(70)方のそばの温泉施設にまで押し寄せていた。

 幸い人的被害はなかったが、崩壊後61世帯156人に出した避難勧告を全て解除するまで1年半を要する災禍となった。

 気候変動が進むと、台風が強大化し、大規模な豪雨も発生の頻度が高くなると予測される。土砂崩れも危惧される災害の一つだ。

 土砂災害の怖さを目の当たりにしたお丸山の崩壊と15年の関東・東北豪雨を経験したさくら市は、新たな対策を探った。目を付けたのは、NTT東日本と提携する気象会社が取り扱っていた土砂災害の危険度予測システム。もともと企業向けだったが、自治体用にアレンジし16年、全国の自治体で初めて導入した。

 市内を1キロ四方に区切った地図の画面に、50カ所の土砂災害警戒区域が表示される。大雨の時は、土壌雨量指数や降雨予測などを基に各区域の危険度を低い順に黄、赤、緑色の3段階で色分けして予測する。緑色は、お丸山崩壊時を想定。予測は最大6時間先まででき、気象予報士の助言も受けられる。

 導入を担当した市職員は「土砂災害の危険性に対し、誰もが同じタイミングで避難情報を正確に出せるようにしたかった」と語る。

 県と宇都宮地方気象台が発表する土砂災害警戒情報は、2時間後の危険度予測などに基づき、5キロ四方ごとに出す。この精度だとさくら市では1区域に複数の警戒区域が入ってしまい、避難情報の発令などの際に迷うこともあったという。

 効果は地域の備えにも波及した。同市蒲須坂自主防災会の大久保睦(おおくぼむつみ)会長(69)は17年7月、このシステムで蒲須坂地区が警戒レベルを超えた際、避難勧告が出ることを周知するお知らせを各戸に配った。

 システムを使う中で、同地区が市内でも特に雨量の多い傾向にあることも分かった。防災意識は一層高まり、17年10月の台風では、市が避難情報を出す前に高齢者の自主避難を公民館で受け入れた。

 システムは県内の他の自治体にも広がりつつある。さくら市に続き、17年度には真岡市が採用。塩谷町は19年度の導入を決めた。

 122の警戒区域がある同町。関東・東北豪雨の時には2カ所で土砂災害が起きた。町の担当者は「先を読めない大雨が増えている。(システムが)100%ではないが、住民を守るための判断材料を増やしたい」と準備を進めている。