手にした枚数は圧倒的に福沢諭吉(ふくざわゆきち)の方が多いが、ありがたみの感じ方は聖徳太子(しょうとくたいし)に軍配が上がる。昭和世代ゆえなのだろう▼その1万円札をはじめとする紙幣3種類のデザインが、20年ぶりに全面的に刷新されることになった。メインの金額表示が洋数字に変わり、外国の紙幣のような印象もある。訪日外国人が増え続ける中では、当然の流れと言える▼1万円札の肖像画に用いられるのは、日本の資本主義の父とされる渋沢栄一(しぶさわえいいち)。県内にも多くの足跡を残している▼渋沢栄一記念財団のホームページを見ると、後にJR日光線、両毛線となる鉄道の開設に関わり、日光のホテル開業を支援している。鹿沼では下野麻紡織会社設立に参画。現在同所に工場を持つ帝国繊維につながる。芳賀郡柳林(やなぎばやし)村(現真岡市柳林)にあった柳林(りゅうりん)農社は、15年ほど前に新たな資料が発見され詳細が判明した▼真岡市文化課によると、同社は渋沢が一族らと共に1874年に設立。当初は養蚕、製茶の2部門を経営する株式会社だった。後に肥料販売や農家への資金貸し付けなども行っている。販売価格下落や不況などによって資金繰りが苦しくなり、89年に廃業した。企業経営の難しさは、今も昔も変わらないということだろう▼新札発行は5年後。透かしの向こうに、郷土の歴史がさらに透けて見えるだろう。