「シルビア」と聞いてまず想起するのは、スポーティーなデザインから若者を中心に人気を博したクルマだろうか。車名の由来は、ギリシャ神話に出てくる女神だそうだ▼この美しい名前が付いた小型のチョウがいる。全国でも数が少なく、県内ではわずかにさくら市の鬼怒川河川敷に生息する「シルビアシジミ」である。市の天然記念物に指定され、住民らの手で保護活動が行われている▼このチョウにまつわる物語が一冊の本にまとまった。発見に至る過程や命名の謎を丹念に調査した、宇都宮大名誉教授中村和夫(なかむらかずお)さん(83)の力作「シルビア物語」(随想舎)である▼大学では草食動物学を専攻したが子どもの頃から大の昆虫好き。明治初期に新種のチョウをさくら市で採取したのが、英国出身のお雇い英語教師フェントンだったことは一部に知られており、発見の足取りを詳細に調べた▼さらに1922年に和名をシルビアシジミと名付けたのは生化学者の中原和郎(なかはらわろう)。米国人妻との間に生まれたものの早世したまな娘の名にちなんだことを確認した。中村さんは米国で、シルビアの墓を見付けた経緯も記した▼ロマンに満ちたチョウを子どもたちに知ってもらおうと絵本にすることを次の目標に掲げている。間もなく羽化の時季。その魅力を確かめに春の河原に出掛けてみようか。