キッチンカーで営業を再開した「森の食堂 龍鳳」の梅野さん(右)と次女の晶子さん

 【益子】中華料理店「龍鳳(りゅうほう)」が4年ぶりにキッチンカーで営業を再開した。店舗の火災と妻の病死で、二度店を閉めた茂木町深沢梅野益男(うめのえきお)さん(71)。失意の店主を再び調理場へ立たせたのは「あの味をもう一度」という住民の熱い思いだ。7日、山本の大郷戸(おおごうと)ダム近くで限定販売した自慢の担々麺は瞬く間に完売。梅野さんの顔には、充実の笑顔があふれた。

 龍鳳は約40年前、益子の町役場からほど近い場所に開店。梅野さんと妻が2人で店を切り盛りし、連日多くの客でにぎわった。名物の担々麺を目当てに、県外からも訪れたほどだ。

 そんな折、2006年に店舗が火災に見舞われた。失意の梅野さんは店の再開を断念した。一方で、再開を望む住民は多く、11年に大郷戸ダムの近くで「村の食堂 龍鳳」として営業を再開した。

 それから4年後、梅野さんは長年連れ添った妻を病気で亡くした。二人三脚で歩んできた妻との死別に「張り合いが無くなった」と閉店を決めたという。

 そんな梅野さんを再び奮い立たせたのは「あの味をもう一度味わいたい」と願う町民らだった。二度目の閉店後、「復活」を粘り強く懇願。熱意に感じ入った梅野さんは「無理せず不定期で開店し、さまざまな場所で食べてもらえるように」とキッチンカーの導入を決意。晴れてキッチンカー「村の食堂 龍鳳」として営業再開が決まった。

 快晴の7日、キッチンカーの調理場に立つ梅野さんの隣には次女晶子(しょうこ)さん(35)がいた。会場となった駐車場には常連客を中心に多くの人が訪れ、担々麺など用意した90食は2時間弱で完売した。

 今後は会員制交流サイト(SNS)などで情報を発信し、町内で不定期に販売する予定。「皆さんの思いが最高にうれしかった。これからも多くの人に味わってもらいたい」と話す梅野さんの笑顔はまぶしく輝いていた。