東京・上野公園の一角に、日本最古の洋式音楽ホールとされる旧東京音楽学校(現東京芸術大音楽部)奏楽堂がある。日本人初の世界的オペラ歌手・三浦環(みうらたまき)がデビューを飾った由緒ある舞台でもあった▼その歴史を受け継いだ同大構内の奏楽堂で先月末、音楽家を夢見る中学生による演奏会が開かれた。同大が一昨年に開設したジュニア・アカデミーのカリキュラムの一環である。今年の演奏会に、県内から2人が参加するというので足を運んだ▼伝統あるホールでの演奏に気後れすることなくオーケストラと共演したり、ピアノや弦楽器のアンサンブルを楽しんだり。専門的な知識があるわけではないが、満場の拍手が出来栄えを物語っていたように思えた▼春は旅立ちの季節である。演奏会を契機にさらに難しい曲に挑戦する人もいれば、音楽とは無関係の高校に進学する生徒もいる。もちろん、大人にとってもそれぞれのスタートがある▼旧東京音楽学校奏楽堂が完成した1890年よりさらに200年前の春。「奥の細道」の旅の序盤で鹿沼や日光、大田原など県内各地を巡った松尾芭蕉(まつおばしょう)は、著作の冒頭に「月日は百代の過客にして、行きかう年もまた旅人なり」と記している▼旅の道中、誘惑も挫折もあるだろう。夢は決して諦めず、間もなく始まる「令和」の時代を生き抜きたい。