山村暮鳥(やまむらぼちょう)の「風景」と名付けた詩に中学時代に出会ったときは驚いた。「いちめんのなのはな」とひらがなで24回も繰り返す▼意味というよりも、字面で味わう詩があるのだと子ども心に思ったものだ。確かにこの詩からは、黄色い菜の花が春の陽を浴び咲き誇る様子が目に浮かぶ▼県内各地から菜の花の便りが届く時季となった。間もなく開花するソメイヨシノとの共演も楽しみだ。実は菜の花という植物名はない、と宇都宮白楊高農場長の橋本智(はしもとさとし)教諭が教えてくれた▼在来ナタネ、カブ、ハクサイ、カラシナなど多種多様なアブラナ科の植物の総称で、みな十字形に黄色い4枚の花びらを咲かせる。万葉集にも登場する佐野市特産の伝統野菜、かき菜も菜の花の一つだという▼おひたしやパスタの具など食べておいしく、春を彩る景観植物として優れ、燃料にもなる菜種油も取れる。さらに近年は、放射能の除染効果も期待できることが分かっている。これほど有用な野菜はそうはない▼菜の花を生かした資源循環型の地域づくりを考える「全国菜の花サミットin那須野が原」が来月、大田原市で開かれる。サミットをきっかけに燃料や食材、観光にも活用できる菜の花の栽培が県内にも一層、広がっていけばいい。今度の週末には、菜の花をめでに近場の野山に出掛けてみようか。