「積小為大(せきしょういだい)」。かつて、旧県庁舎の執務室には、こんな色紙が掲げられていた記憶がある▼小さなことを積み重ね、大きなことを成し遂げる-。江戸時代末期、本県をはじめ関東の荒廃した農村を相次いで復興させた二宮尊徳(にのみやそんとく)がモットーにしていた思想である▼尊徳の生涯を初めて描いた映画「二宮金次郎きんじろう)」の特別試写会が先日、日光市で開かれた。小田原藩主に命じられ支藩の桜町領(現真岡市)に赴任した際、荒れた田畑を目の当たりにして自ら言い聞かせたのがまさに冒頭の言葉だった▼映画の終盤に登場する日光は、尊徳が生涯を終えた地である。「撮影で日光を訪れ、二宮堀が今も市民に親しまれていることなどを知りました。尊徳が生きているような印象を持ちました」。五十嵐(いがらし)匠(しょう)監督は舞台あいさつで、こう振り返った▼尊徳といえば、小学校にあった、まきを背負いながら読書に励むあの像の姿が印象深い。貧しさにもめげず、黙々と勉強し働く、といった道徳的な捉え方に加え、独自の経済観念にも焦点を当てたのが映画の見どころという▼その基本になるのが、「身の丈にあった己の心」と、映画では紹介された「分度」である。尊?の没後、150年余りがたつ。間もなく新たな時代を迎える。本県ゆかりの偉人に改めて思いをはせる、絶好の機会かも知れない。