タムラファームによる2作目の飼料用トウモロコシ収穫。1作目より栽培期間が長い品種を育てるという=2016年、栃木市内(パイオニアエコサイエンス提供)

 ロールされたトウモロコシ飼料からは、発酵によるほのかな甘酸っぱい匂いが立ち上った。

 「これは(二期作の)2作目のものですね」

 畜産などを手掛ける栃木市樋ノ口町の「タムラファーム」。8日午前、社長を務める田村浩一(たむらこういち)さん(45)がロール表面のラップを剥がして、中身を手に取った。

 同社は10年ほど前から飼料用トウモロコシを、同じ田畑で年に2回収穫する二期作に取り組んでいる。

 この二期作はいま、本県が北限とされる。

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 飼料用トウモロコシの二期作は従来、九州や四国などの暖かい地方で実施されてきた栽培方法だ。

 だが、近年の温暖化傾向で、東海地方や関東地方の一部でも始まっている。種苗会社「パイオニアエコサイエンス」(本社・東京都港区)によると、「栃木県内でのトウモロコシ二期作は2000年代後半から本格的にスタートした」という。

 県内はもともと飼料作物の二毛作地帯に当たり、夏場にトウモロコシ、冬から春にかけては寒さに強いイタリアンライグラスなどの牧草を育てるのが一般的だ。これに対し、トウモロコシ二期作では1作目を主に3月末~7月ごろ、2作目を8月~11月ごろに栽培、収穫する。

 畜産農家にとって、二期作のメリットは大きいようだ。

 国立研究開発法人の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究によると、本県の県南で07~12年に実施した試験では、従来の二毛作よりも二期作の方が、収量が1割ほど多く、生産費は1割弱低いという結果が出たという。

 適地となる年平均気温は15度前後とみられる。現在、県内では県南、県央の一部農家が手掛けており、昨年の作付面積は計20ヘクタールほど。将来の気温上昇で、適地は2040年ごろには県央に広がり、90年ごろには県北まで北上すると予測されている。

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 ただ、北限である現状では2作目の収量が不安定で、1作目に比べ数割落ちてしまうのが課題だ。

 タムラファームの田村社長は「2作目は種まき時期の天気の具合や台風など変動要因がある」とも指摘し、将来の気候変動についても不安が残るという。「暖かくなれば成長具合は良くなるかもしれないが、集中豪雨や日照りなど極端な気象が増えればリスクも大きくなる」

 飼料作物に詳しい農研機構畜産研究部門の菅野勉(かんのつとむ)栽培技術ユニット長は「温暖化に伴って県内では二期作ができるようになりつつある」とする一方、「気象災害などを考えると、二期作のみではなく二毛作を組み合わせる方が望ましい」と話す。気候変動は気温の上昇だけでなく、気象の極端化ももたらす。そこに適応の難しさの一端がある。