昨年世に出た県オリジナル酒米「夢ささら」を使って、県内の蔵元の大半が醸造した純米吟醸酒が一斉に発売された。新酒発表会で試飲したが、華やかな香りとコクがあり誇れる出来栄えと言える▼県酒造組合から「吟醸、大吟醸向きの酒米を開発してほしい」との要請を受け、県農業試験場が着手したのが2005年。13年の歳月と40人を超す研究員らの努力で、4万6千株の中から夢ささらは生まれた▼選抜と育種を繰り返し、玄米を一粒ずつ切って中央部にあるでんぷん質の「心白」の大きさを測るなど気の遠くなる作業を続けた。県産業技術センターや生産農家も協力し、オール栃木でのプロジェクトとなった▼倒伏しにくく病気に強い。醸造適性に優れ農家が安心して作れる。酒米の王様「山田錦」を超えるという目標は達成したと言えるのではないか。新酒を小売店で購入する際には、統一の首掛けラベルが目印となる▼無濾過(ろか)原酒など蔵元ごとに個性があり、どれを選ぶか悩むのも楽しみのうちだろう。「とちぎの地元の酒で乾杯を推進する条例」が制定されて6年目を迎え、地酒のおいしさを再認識する機運は十分高まっている▼灘や伏見などを尊び地酒を低く見る「地元半値」の風潮は過去のことである。夢ささらの誕生で地酒を愛する気持ちは一層深まるに違いない。