「忠」とは儒教の根本道徳の一つ、と百科事典にある。元来、中と心を結合した文字で、真心を意味した。忠義、忠誠、さらには忠臣蔵など忠を用いた言葉は多種あるが、親しみやすいところでは忠犬があろうか▼東京・JR渋谷駅前のハチ公像は待ち合わせ場所として名高い。死去した飼い主の東京大教授の帰りを10年間も、駅前で待ち続けた逸話は人々の感動を呼んだ。8日はハチ公の84回目の命日に当たる▼この日は、鹿沼市に拠点を置くNPO法人「とちぎアニマルセラピー協会」の第1号セラピー犬だったイッシュの初めての月命日でもあるという。10歳で病死した雄のラブラドールレトリバー犬は極めて人なつこく、多くの人に愛された▼同協会の平澤剛(ひらさわつよし)理事長(57)によれば、県内の病院や高齢者・障害者施設に犬たちを連れて定期訪問し、患者らと触れ合う活動を続けている。犬と人双方にオキシトシンというホルモンが分泌され、これが癒やしの元となっていることが近年、証明されているそうだ▼ニーズは増えているが、課題は資金難。訪問すればするほど赤字が増しているのが現状だ。平澤さんは「人々に寄り添う活動を末永く続けていきたい」と賛助を呼びかける▼セラピーを通して犬と人との交流が一層深まれば、天国のハチ公もしっぽを振って喜ぶに違いない。