近隣からの延焼で人形や衣装などが焼けた現場=25日午後、佐野市田沼町

昨年10月ごろに撮影された全焼前の作業場と柳さん。写真は今回の火災で一部が焦げたが、焼け残った(柳社長提供)

近隣からの延焼で人形や衣装などが焼けた現場=25日午後、佐野市田沼町 昨年10月ごろに撮影された全焼前の作業場と柳さん。写真は今回の火災で一部が焦げたが、焼け残った(柳社長提供)

 佐野市田沼町でアパートなどを全焼した18日発生の火災で、お化け屋敷の企画や運営で全国的に有名な同所の丸山工芸社=柳誠(やなぎまこと)社長(73)=も巻き込まれ事務所や作業場を全焼し、保管していた人形計200体以上などを焼失した。被害額は億単位に上るとみられ前途は多難だが、柳社長は「今夏も佐野や宇都宮でお化け屋敷を開けるよう、修復や企画の練り直しを行う」と話し、焼け跡からまだ使える人形や衣装を探し出すなど再興に向け歩み始めている。

 同社は大正11(1922)年、柳社長の父の故梅吉(うめきち)さんが母の故タマさんと結婚後に創業した。当初は人形芝居などで全国を回ったが、昭和初期に始めたお化け屋敷が人気を獲得。戦後は「浅草花やしき」や「後楽園ゆうえんち」などを含め、全国でお化け屋敷の制作に携わるようになった。

 後を継いだ柳社長は、人形制作をはじめ、機械仕掛けのお化け屋敷全体の制作を手掛ける。飛び出す人形のほか、床の振動や怪奇音などを駆使した迫力あるお化け屋敷は全国から依頼が舞い込み、県内では佐野市や宇都宮市で毎年開かれている。

 今回焼失した人形には、お化け屋敷用の人形以外にも、代々人形一座だったというタマさんの実家から受け継いだ江戸時代末期制作の「豆人形」など貴重な品々も含まれている。母屋は被害を免れたものの、柳社長は「お金をいくら出しても欲しいという人がいる貴重な品々ばかり」と肩を落とす。

 しかし、「いつまでも火事に負けていられない」と自らを奮い立たせ、焼け跡の整理を進め、早ければ3月上旬には企画の練り直しや人形の修復に取りかかる。焼け残った人形は桐(きり)の粉やのりなどを使って修復することができるといい、柳社長は「今年の夏に間に合うよう、修復を急ぎたい」と話している。

 宇都宮市で毎年開かれる「オリオン通りお化け屋敷」の運営に携わっている宇都宮オリオン通り商店街振興組合事務局の松田法子(まつだのりこ)さん(54)は「お化けに着せる古い浴衣の寄付を募るなどの支援をしたいと考えている。新生丸山工芸社としての復活を待っています」とエールを送っている。