大正時代に米国からボクシングをもたらし広めた渡辺勇次郎(わたなべゆうじろう)(1887~1956年)は、「ボクシングの父」といわれている。矢板市の出身である▼渡辺から手ほどきを受けた、真岡市生まれのピストン堀口(ほりぐち)(1914~50年)は、その活躍から「拳聖」とうたわれた。偉業を成し遂げた2人を輩出した本県を、ボクシングの伝統が息づく聖地と呼ぶのは大げさだろうか▼そんな土地柄におのずから引き寄せられたのかも知れない。昨年6月に大田原市にフィットネスジム「ハニーラルヴァ」を開設した芹江匡普(せりえまさあき)さん(35)は、日本スーパーバンタム級の元チャンピオンである▼東京・深川で生まれ育ち、高校時代は器械体操に打ち込み都大会を制したことも。大けがで体操を断念し、ぐれかけた芹江少年が出会ったのがボクシングだった。26歳で頂点に立ち、6度に及ぶ防衛に成功した▼引退をきっかけに、大田原への移住を決めたのは「ちょうどいい場所。必要なものはそろっているし、大自然もある」ためだという。ジムを拠点にボクシングを生かした健康づくりを広め、地域おこし協力隊としても地元の活性化に力を尽くす▼世界ランク6位まで到達した芹江さんの次の目標は「大田原の良さを後押ししていくこと」。天国の先輩ボクサーも、きっと応援してくれるに違いない。