乾燥した環境下に置いた節水型耐乾性小麦(右)と通常の小麦

 宇都宮大バイオサイエンス教育研究センターの岡本昌憲(おかもとまさのり)助教(41)らを中心とした国際共同研究チームは10日までに、少ない水でも生育可能な節水型耐乾性小麦の開発に世界で初めて成功したと発表した。世界的な干ばつや砂漠化、発展途上国の小麦需要増加により将来的な小麦不足も懸念される中、乾燥地域での小麦栽培が可能になることで食糧の安定供給に貢献することが期待される。

 岡本助教らは小麦に含まれる耐乾性に関与するタンパク質の一種アブシジン酸(ABA)受容体に着目し、遺伝子組み換えによってABA受容体を多く蓄積する小麦を開発。水を与えず乾燥した環境下で栽培したところ、葉の気孔が閉じて蒸散量が抑制され、高い耐乾性を示した。

 気孔が閉じることで二酸化炭素の吸収量も減るが、光合成量は通常の小麦と変わらなかった。同じ量の水で栽培した場合の光合成効率は通常の小麦より約15%向上し、種子量は約35%増加した。

 小麦の生産量は中国、インド、ロシア、米国などが上位となっているが、いずれも気候変動による干ばつや砂漠化が生産の課題となっている。一方、アフリカ諸国をはじめとする発展途上国では経済成長に伴い小麦の需要が高まっており、今後、小麦不足や価格高騰も見込まれる。

 岡本助教は「耐乾性の高い小麦が普及することで、食糧難の解消や価格安定につながる。多くの小麦を輸入に頼っている日本も無縁ではない」と指摘する。さらに「遺伝子組み換えに悪いイメージを持つ人も多いが、ABA受容体は本来、小麦に含まれている成分なので、悪影響の可能性は低いのでは」としている。

 同チームは、同大のほか、鳥取大、理化学研究所、カリフォルニア大リバーサイド校などの研究者で組織している。

 研究成果は学術誌ネイチャープランツ電子版に掲載された。