講演する木沢特命教授=昨年12月、真岡市内

 人生の最終段階、「もしもの時」に希望の医療・ケアをどう実現するか-。周囲と話し合って意思を共有する「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)が注目され始めている。意思表示の手法としてはエンディングノートなどの書面による事前指示が知られるが、先月、真岡市で講演したACPの第一人者、木沢義之(きざわよしゆき)神戸大医学部緩和支持治療科特命教授(52)は「書面だけでは十分ではない」と訴える。繰り返し話し合うプロセスがより重要となるようだ。

 多くの患者が最終段階に自ら意思決定できていない現状を踏まえ、木沢特命教授は、子などの「代理決定者」の重要性を説く。希望する医療・ケアを患者が「リビングウイル」として書き残しても、「代理決定者が作成に関わっていない、選択の背景が分からない」場合は有効でなくなることもあるという。

 ACP導入のタイミングについては「早すぎると、遠い未来についての不明確なものとなる。後に、その選択を覚えていないことになりかねない」とする一方、「遅すぎると、患者が生命の危機に直面し話し合いを避けるようになる」と指摘した。

 医療者らが自らに「この患者が1年のうちに亡くなったら驚くか」という「サプライズクエスチョン」をして「驚かない」と考えたなら「ACPを行う時期」。導入する人は、医療者としては「その人のことをよく知るかかりつけ医が一番いい」とした。

 進め方としては、まず「もし抗がん剤が効かなくなった時のことを考えたことがありますか」などと患者に問い掛け、心の準備状況に応じて話をやめたり進めたりする。進める際には代理決定者が話に入ることが欠かせない。

 木沢特命教授は、自身が看取(みと)った母親のAPCの事例を紹介。「お父さん(夫)といたい」「手術などの痛いことはしないで」と繰り返していた母親の希望が、現実の選択で役立ったいう。

 「ACPは希望を絶ってしまうこともあり、全患者への適用は難しい」としながらも、病状や気持ちが変化するプロセスの中で繰り返し行われる有効性を強調した。

 講演会は芳賀郡市1市4町と郡市医師会が主催。医療・介護関係者、一般の計約500人が訪れた。

 

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)  本人や家族、医療・介護従事者が話し合いを通じて本人の価値観を明らかにし、治療・ケアの希望などをはっきりさせるプロセス。必ずしも文書化を求めない。厚生労働省は、2018年3月に公表した終末期医療の改正ガイドラインにACPの考え方を盛り込んだ。