無名だが偉大な功績を残した人々を取り上げて人気を博したNHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX~挑戦者たち~」▼歴史小説の世界でもプロジェクトX的な作品は多い。織田信長(おだのぶなが)に安土城の設計・建築を命ぜられた棟梁(とうりょう)父子の葛藤と築城プロセスを描いた「火天の城」(山本兼一(やまもとけんいち)著)は、松本清張(まつもとせいちょう)賞を受賞し映画化された▼宇都宮出身の直木賞作家門井慶喜(かどいよしのぶ)さんの「家康(いえやす)、江戸を建てる」も同じ系列といえる。連作短編集で、徳川(とくがわ)家康の命を受け、関東の荒れ地に挑んで現在の東京までつながる街づくりの基盤を作り上げた人々を描いた▼利根川の流れを変えた治水工事や貨幣鋳造、飲料水の確保、江戸城の石積み、天守の建設の五つの物語はどれもが興味深く一気に読破できた。作品は、今年のNHK正月時代劇の原作となった▼2日間にわたって放映され、期待に違わない内容だった。門井さんは現在、新潮社の電子版小説誌で「地中の星」を連載している。日本初の地下鉄・銀座線を開通させた人々の話で、これも“プロジェクト小説”といっていいだろう▼門井さんが昨年、宇都宮市で講演をした際に出席者から日光東照宮を題材に小説を書けないかと要望が出た。豪華絢爛(けんらん)な彫刻や日光杉並木など建設にまつわる題材は尽きないはずだ。小説化をぜひ検討してほしい。